玉稿激論集

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誹謗中傷について

インターネットでの誹謗中傷に対処する法律の改正が進められているというニュースを見た。総務大臣曰く、「匿名で人を中傷する行為は人として、ひきょうで許し難い」とのことで、改正されると、匿名の発信者の特定が容易になるらしい。

 

総務大臣の発言は、多くの人が賛同するところだろう。言葉というのはときに、鋭利なナイフとなって、突き刺さり、その人の命を奪うことだってあるのだから。でも、何をもって「誹謗中傷」とするのかの線引きは、なかなか難しい。

 

YouTubeに転がっている動画のコメント欄を見ていると、「ひどいことを言うなあ」と思うことがままある。ただ、人間というのは度し難いもので、ネガティブなコメントが自分のあまり好きでない人に投げかけられていたりすると、「うまいこと言うなあ」とほくそ笑んだりもしてしまう。そういったコメントの中には、シンプルな罵詈雑言ではない、いわゆる大喜利的なものが含まれており、多くの「いいね」を獲得している。これは僕の想像に過ぎないのだが、批判される側がより傷つくのは、「バカ」とか「アホ」みたいなシンプルな悪口よりも、そういう核心を突いて「うまいこと」を言ってくるコメントなのではないだろうか。でも、それが「誹謗中傷」になると簡単に結論付けることはできないと思う。

 

例えば、詐欺の受け子で逮捕された女が、醜く、かつ太っていたとする。この場合、この女についてのニュース動画に対して、「ブス」とか「デブ」といった、女を誹謗中傷するコメントが付くだろう。もしかしたら、法改正によって、これらのコメントを規制することができるようになるのかもしれない。しかし、「おい、養豚業者、豚が一匹脱走してんぞ!」とか、「『豚の生姜焼き作り方』で検索したら、この動画が出てきた」といったコメントは、どうだろうか。こういったコメントも、「ブス」とか「デブ」と同等の(もしくはそれ以上の)切れ味を持っているにもかかわらず、取り締まるのはなかなか難しいと思う。というのも、ここでの「豚」という語が、女を指していると断言することができないからだ。これらを取り締まろうとすると、「え、何のこと言ってんすか、全国の養豚業者に喝を入れただけっすよ」「俺も生姜焼きの作り方調べてただけなのに」「え、もしかして、俺らがこの女性に対して言ったとでも?」「そんなこと思いもしなかったわ」「逆にあなた失礼ですよ、この人のこと豚って思ってるなんて」と、なってしまう。

 

話は逸れるけど、アニメキャラを載せた献血のポスターが、性的だという批判を浴びたときも、同様の輩が沸いていたと思う。「え、これのどこが性的なんですか、わからないですね」「あなたの見る目がいやらしいから、そういう風に感じてしまうんじゃないんですか」とか言う輩だ。

 

こういう奴らを言い負かすような理論を打ち立てるのは、僕には骨が折れる。ただ、「うるせーバーカ、見りゃわかんだろうがよ!!」という言葉しか思い浮かばない。

 

ここのところ、こんな感じの「無理が通れば道理がひっこむ」事案が増えてきているように思う。僕もたいがい理屈っぽいところはあるけれど、「常識」なるものが全く通用しない世界は歓迎するところではない。でも、腐敗はすでに始まっているし、これからもそのスピードを緩めることはないだろう。憂鬱な結論だけど。