玉稿激論集

玉稿をやっています。

週末日記(ニ)

五月二十七日(日)

 七時起床。眠気激しく、二度寝。十時再起床。
 十一時過ぎコンビニへ赴き、朝(昼)飯、二リットルの水、パイプ用洗剤を購入、同時に水道料金も支払う。
 帰室し、サンドウィッチとマウントレーニアのカフェラテを食した後、風呂掃除。パイプユニッシュが大活躍する。これほど効果覿面ということは、絶対何かヤバいものが入っている。まあ、何はともあれ、懸念事項(パイプの詰まり)が一つ解消される。
 自室にて昨晩からの作業を再開。何てことはない、トレーシングペーパーを用いたブックカバー作りだが、紙を折り畳み、そこに本を収納する単純作業に結構な時間没頭する。案外に自分は内職向きなのかもしれない、手先は篦棒に不器用だが。
 作業中のバック・グラウンド・ミュージックは、浜田省吾のアルバム『愛の世代の前に』。かれこれ中学生の頃から聴いているが、改めて完璧なアルバムとの感想を抱く。スキップできない名曲がこれ以上ない順番でラインナップされているアルバムとしては、該アルバム以外では尾崎豊の『十七歳の地図』と『回帰線』ぐらいしか思い浮かばない。
 大人への反逆を歌ったシンガーとしては、尾崎豊がその嚆矢とされがち(?)だが、浜田省吾こそがかのフィールドの開拓者のように自分には思われる。「教室じゃ俺いつも窓の外を見てるだけ」、「退屈で死にそうな授業」、「Highschool Jail」等の歌詞が出てくる『独立記念日』(上述のアルバムの収録曲)は、彼のヘビーリスナーだった尾崎豊に間違いなく影響を与えたことだろう。
 中学生の頃、駅前の小さな本屋の店頭に貼られていた「浜田省吾ライブDVD『MY FIRST LOVE』近日発売」とのチラシに何故か惹きつけられた。それまでも聴いたことはあったが、特にハマりはしなかったのに。部活帰りに当時も今も大金の五千五百円を握り締めて購入したDVDは、それこそ擦り切れるまで見たし、部屋にはポスターを貼って飽かずに眺めた。無論聞いている音楽について話の合う友人は皆無だった。まあ、これは今でもさして変わらないが、この頃は好きなミュージシャンを聞かれて割に躊躇いなく答えられるようになったのは、特段悪い変化でもないだろう。
 作業終了後、NHKにて日本ダービーの観戦。言葉を交わしたことのあるジョッキー二名を応援するも、勝たず。やはり武豊は強い。
 昼寝をしていないことに思いが及び、少し焦燥感に駆られる。若干眠いので、ひとまず消灯して午睡。体内時計のアラームのみ一時間後に設定。
 十七時過ぎに目覚める。体内アラームが正常に起動したことに、「作戦通り」との笑みを浮かべる。勿論漫画『Death Note』の夜神月本歌取りである。一息ついて、イオンにて晩飯の調達。暑い。
 日没後、気温が幾分か下がったのを確認してから、ランニング。3.6キロ。一時に比べて頻度は減じたが、これでもう1年半以上習慣的に走っている。継続がいつしか強大な力に転化するのを願う。などと、訳のわからぬ抽象的なことをほざいているようでは何も進歩はないだろう。
 ところで、己にはさしたる大志もないくせに、目標へ邁進している他人にそれっぽい発破をかける悪癖が自分にはある。過日も目標の実現を「遅かれ早かれ」目指すとした知人に対して、「遅かれではあかんやろ」などと無責任な言辞を弄してしまった。まあ、その時の偽らざる思いだったから致し方ないか。   
 自分ももっと速く、もっともっと速く走りたい(などと、訳のわからぬ抽象的な以下略。)。
 帰室後、すぐさま入浴、洗濯、計量。マイナス0.3キロ。些か軽量に過ぎる感あり。
 前の前の職場には自分とほぼ同じ身長で、自分の二倍近い体重の同僚というか先輩がいた。別に太っていたわけではない(まあ、そういった面もなくはなかったが)。はちゃめちゃに筋トレをしていたのだ。週五日ジムに通い、120キロを超えるベンチを上げ、メジャーリーガーでもないのに決まった時間にプロテインを補給する該先輩と自分は、性別と二足歩行ぐらいしか共通点がなかったにもかかわらず、なぜか意気投合した。
 奇妙な疫病の流行の煽りを受けて閑散を極めていた職場にあって、バカ話にでも興じようと先輩の机に赴くと、宮沢賢治の詩集を読んでいた。
「『永訣の朝』が好きなんです」
「妹が死んだときに詠んだやつでしたっけ?」
「そうです、なんで知っているんですか?」
「いや、まあ、なんとなく」
漫画『六三四の剣』で主人公・六三四が該詩に何故か感動して落涙していたからなぞと言っても、わかってもらえないだろう。
「『春と修羅』とかもいいですよね。あとあれタイトル忘れたけど、未来圏からの風がどうたらとかいうやつ。あれもかっこいい」
こういう会話が所謂「マウンティング」を抜きにできる人が職場にいたことが新鮮な驚きだった。
 緊急事態宣言中、会社から「街に出るときは気を張って街に出ましょう」などとという開いた口が塞がらぬ達しが出た際にも、退勤後サイゼリヤにて先輩と酒宴を開いた。勿論自分は定期的に先輩に対し、「気、張ってますか?」と確認することを怠らなかった。
 自分の異動が決まった際も、堺の焼肉屋でサシ飲みした。会計時、「今日は払いますよ」と言う先輩に、「いや、申し訳ないです」と財布を取り出すと、「あ、じゃあ、お願いします」と伝票を渡されそうになったから、思い切って「ラリー下手か!育ち悪いんですか!?」とぶち撒けると、大いに笑ってくれた。結局、二軒目も多目に払ってもらったから、締めのラーメン代だけは自分が出した(はず)。
 晩飯。上海焼きそば、油淋鶏、出汁巻き玉子、ほうれん草の胡麻和え。缶ビール二本。
 そろそろブログも切り上げて、明日に備えて寝なければ。仕事がアホほど溜まっている。書類に痛罵を浴びせかける五日間がまたぞろ始まる。
 天才芸人・粗品が開発した、この上なく腹が立ったときにするツッコミが「お前のこと誰が好きなん!?」だ。彼はさらにこう続ける。
「いや、お前のこと誰が好きやねん!?」
「ええことないねやろ、普段生活してて、なあ」
「お察しします!」
「お前親大切にせえよ」
「親だけや、お前の味方は」
 粗品の影響かどうかは不明だが、ここのところ書類に小声で毒づく際の決まり文句として、「お前何だったらできんねん!?」が定着しつつある。折角だから、粗品の「おまだれ」的に二の矢、三の矢も開発したい。